SPUR NEW&NOW 「RUOHAN」デザイナー ニー・ルオハン インタビュー
音楽で培った詩的美学をファッションで世界に届ける
「中国を代表するブランドよりも、一時代を象徴するデザイナーになりたい」と語るニー・ルオハン。24歳からパリで自身の名を冠したブランドのコレクションをショ一形式で発表し、世界に販路を広げる彼女は、今注目のデザイナーだ。5月には、「フオーブス」誌の「30 UNDER 30 ASIA 2025」に選出されるなど、躍進は続く。 幼少期からチェロ、フルート、ピアノを学び、演奏を含むポートフォリオでパーソンズ美術大学のファッションデザイン科に合格。クラシック音楽で培った感覚は、彼女のデザイン哲学の礎となっている。「作曲も服作りも、すべての芸術は、“実践”に基づきます。モチーフを決め、それを発展させ、落とし込む。このプロセスの積み重ねによって生まれるコレクションは、それぞれにどことなくつながりが生まれるんです」学生時代は“勤勉なアジア人”としてパリの美術館パレ・ド・トーキョー、ニューヨークのアレキサンダーワンやザ・ロウでインターンのキャリアを重ねた。卒業後にザ・ロウのチームに加わったあと、マルチブランドブティックのラ ギャルソンヌに勤務。これらの経験が、ブランド立ち上げ当初から優れた工場との取引を実現。現在上海を拠点に、中国産の上質なシルクのほか、イタリアや日本からも厳選した素材を調達している。 シンプルかつ洗練されたデザインから、“クワイエット・ラグジュアリー”の文脈で語られることも多いが、「少なくとも30~40年以上の歴史がなければ、ラグジュアリーブランドとは言えません。また、私たちのような若手ブランドは“静がではなく、声を上げ、多くの人に知ってもらうべきですよね」と野心を隠さない。 「世界中に共感される普遍的かつ詩的な美学を追求したい」という彼女の言葉からは、聡明さと、自らの道を切り拓く強い意志を感じる。「ファッションは服にとどまりません。 将来的にはインテリアなど、より広い分野で世界観を伝えていきたいです」